『首』: たけし独自解釈の戦国コントはニヤニヤしながら観れる

4.0
映画

北野武監督最新作『首』が11月23日に公開された。戦国時代を舞台にした今作の予告編では、豪華俳優演じる強者たちが斬りまくり撃ちまくりで大暴れ。キャッチフレーズは「狂ってやがる」だ。バイオレンス満載のザ・北野作品になることが予想されていた。

天下統一を掲げる織田信長は、毛利軍をはじめとした緒勢力と激しい戦いを繰り広げていたが、その最中、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こし姿を消す。信長は羽柴秀吉、明智光秀ら家臣に村重の捜索を命じる。秀吉の弟・秀長、軍司・黒田官兵衛の策で捕らえられた村重は光秀に引き渡されるが、光秀はなぜか村重を殺さず匿う。村重の行方が分からず苛立つ信長は、思いもよらない方向へ疑いの目を向け始めるが、それは全て仕組まれた罠だった。

果たして黒幕は誰なのか?
権力争いの行方は?
史実を根底から覆す波乱の展開が、
“本能寺の変”に向かって動き出す―

映画『首』公式サイト Storyより引用・抜粋

早速IMAXシアターで観てきた。『首』は事前予想通りの内容のバイオレンス映画だが、最近の邦画にはあまりない特徴がある。暴力と笑いがセットになって出てくるのだ。コント仕立ての笑いシーンに乗っかって、権力を持った者からの理不尽な暴力、虐げられる者たちの怒り、生き残るために駆使される謀略、そして愛憎、、、登場人物の大抵の行為が暴力と言っても過言では無い。よくこれがカンヌで拍手喝采だったなと思うくらいだ。でも良く考えれば暴力と笑いがセットって、欧米的な笑いのセンスだと思う。不謹慎な笑いが大好きな私的には、観てよかったと思える作品だった。配信に来たらリピート再生するかも。そんな映画だった。

ちなみに音の良さ+あるワンシーンを例外としても、この映画をIMAXで見る必要はほぼ無いと感じた。普通のスクリーンで十分。500円節約しましょう。

最初のサワガニが印象的だった

まず冒頭から「おお〜」となるシーンがあった。死体に群がるサワガニである。北野作品には必ず「死」がある。今作でそれがどのように描かれるかは、試聴する全ての人が気にしていたと思うが、監督はそれを初っ端から提示してきた。冒頭、導入のテロップと共に、激しい戦闘があったと思われる川沿いが写り、やがて⚪︎体が流れてくる。最初は胴体が、徐々に頭部が画角に入ってくるのだが、その頭はぐちゃぐちゃに潰れてサワガニが大量に群がっている。ある知り合いが「甲殻類は人間の⚪︎体に群がるんだよ」と教えてくれたことがあったが、まさにそれだと思った。戦国の世を舞台にした今作の「死」は、それまでの作品(=現代が舞台)と比べてより野生的で無秩序なものであると、このシーンは示しているのかもしれない。

可哀想な清水宗治に観客爆笑

もう一つ特に良かったシーンを紹介。毛利方が立て籠もる備中高松城を水攻めで攻略する「備中高松城水攻め」のシーンだ。秀吉お抱えの名軍師・黒田官兵衛の奇策・水攻めによって、同城の城主・清水宗治は自身の切腹を条件とする和睦を強いられる。劇中での和睦交渉は、毛利方の僧侶・安国寺恵瓊と清水宗治、そして黒田官兵衛の3人で行われる。恵瓊には既に毛利から「宗治を切れ」との指示が降っているので、大袈裟な演技で黒田に毅然と対応(するふりを)しつつ、切腹の条件を呑むようなんとか宗治に自分から言わせようとする。宗治を演じるのは荒川良々。いい人そうな顔で覚悟を決める姿がなんとも笑えた。

切腹を決意した宗治は、水浸しになった領地に船で漕ぎ出し、船上で切腹を決行する。秀吉、弟の秀長、黒田が自陣から望遠鏡でそれを眺めて和睦の成立を見守るのだが、ここなんかはもう北野映画というより豪華俳優で繰り広げられるたけし流コントだ。船上で辞世を句を読み、舞を舞う宗治は終始真剣、神妙な面持ち。対して丘の上から見守る秀吉軍は、

  • 秀吉「早く切れよバカヤロー!」「(望遠鏡が)壊れてて良く見えねえな」
  • 官兵衛「まあまあ、彼も最後なんで(意訳)」
  • 秀長「(用を足して戻ってきて)あれ!?まだやってんの!?」

…という、切る側と切らせる側を対比するブラックな笑い。最高。ちなみにたけしの「バカヤロー!」は劇中何回も出てくる。

そしてこのシーンの画が純粋に良かった。キラキラ光る水面を全面に映し、ど真ん中にポツンと小舟とこれから切腹する白装束の武将。一国の武将が敗北し、自ら死へ向かう儚さが際立っている。このシーンに関しては、IMAXのでっかいスクリーンで観て良かったと思う(まあそれも笑いのための演出なのだが)。

時代に合わない笑いだけど、好きな人は気にいるはず

先にも書いた通り、『首』は上映時間中ずっと暴力尽くしの映画だ。加えてそれを振るうもの、被るもの、そして暴力そのもの自体を茶化し、「笑えるだろ?」と言って提供してくる。どう考えても今の時代にそぐわない内容だが、僕のような一部の捻くれ者にはそれが面白い。はっきり言って、何も考えずフラッと観に行って笑える。『首は』そんな映画である。ただ、一連の作品の中では特異な内容であるにも関わらず、北野監督がなぜ今この作品を世に出したのか、そこに何かたけしのメッセージや主張があるのではないかとも思える。

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